私の人生で一番古い記憶は0歳の時、祖父の葬儀の記憶です。緑色の田んぼの中の道を黒い喪服の集団が列になって、山に向かって歩いていく景色です。
田舎なので、ホールなどではなく自宅で葬儀をします。
大人になってから、祖母が亡くなり、喪服の集団が列になって歩いていくのを見て、
「これ、見たことある……」
と思い出しました。
親に聞くと、親戚の誰かに抱かれて見送っていたんじゃないかと言われました。まだ小さいのでお墓まで連れていくのは危ないと思われたのでしょう。お墓は山のふもと、斜面になっているうえに、ジメジメして地面は湿っているような場所です。
夜にひとりで行けと言われたら無理だと思うような場所……。赤ちゃんを連れていこうとはあまり思わないでしょう。
色のコントラストなど、記憶に強烈に残る景色だったのでしょうか。物心もついていないけど、周りの普段とは違う空気や感情にも影響されたのかもしれません。
田舎の風習なので、列になって歩く他にも、大きな数珠を何人もが輪になって持ってグルグル回したり、ということもありました。
父親は大雨カミナリの中、棺を収める穴を掘ったと言っています。
葬儀社に頼まない、田舎の因習、いえ風習のあるお葬式。
まだまだ日本にはそういうものが残っているのでしょう。